事業承継税制とは

事業承継税制とは、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」のことで、この制度を利用すれば、後継者が現経営者から自社株式を贈与あるいは相続・遺贈によって取得した場合、一定の条件を満たして所定の手続きを行うと、贈与税・相続税の納税が猶予されます。


中小企業のオーナーにとって、換金性のない自社株式に対して多額の相続税が課されることは死活問題です。会社に負担をかけず、円滑な事業承継ができるようにするために設けられたのが、この「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」なのです。

平成30年事業承継税制の改正内容

社長や会社経営者たちは、後継者への経営権の承継を検討するものも、経営状況が芳しいほど、高額になった自社株の株式評価額が足かせになり事業承継が停滞しがちでした。
このような現状の課題を解決するため、事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)では、現行制度の改正だけでなく、10年間の特例措置として抜本的な見直しが行われた特例制度が創設されました。

【贈与税・相続税の納税猶予の改正内容一覧】

これにより、中小企業者は贈与時および相続時の税負担がゼロで、後継者に自社の株式を承継させることが可能となります。

ただし、特例制度を適用するには、201841日から2023331日までの間に特例承継計画を都道府県に提出する必要があります(提出期間は5年に限定)。

【贈与税の納税猶予の全体像と改正の影響】



【相続税の納税猶予の全体像と改正の影響】



改正ポイント:納税猶予対象株式及び納税猶予税額の拡大

納税を猶予してもらうことができる株式の条件が従来の「3分の2」から「すべて」に変更されます。

なお、ここでいう「株式」とは「議決権のある発行済み株式総数」のことで、後継者が相続開始前に取得していたものも含みます。


従来は対象となる株式の80%までの税金が猶予とされていたところ、平成30年改正では100の税金が猶予されることとなりました。対象となる株式が3分の2からすべてに変更されたこととあいまって、大幅に税負担が小さくなりました。


※従来は株式総数の3分の2が対象であったため、実質的には53%までが猶予の対象(3分の2×80%)でしたが、改正後には100%猶予を受けることが可能になりました。

すべての株式が納税猶予の対象となったことで、今まで以上に後継者ではない相続人の遺留分に配慮する必要があります。

設例

・被相続人は発行済株式の全株を保有しており、特例後継者が全株を相続により取得(相続開始時の相続税評価額:3億円)。

・特例後継者は被相続人の子で、相続人はこの子1名のみ。上記株式以外に相続財産なし。

【相続税の納税猶予 原則制度と特例制度のイメージ】


改正ポイント②:先代経営者側、後継経営者側の人的要件の緩和

従来は「先代経営者1人から後継経営者1人」への事業承継が行われる場合だけが事業承継税制の対象となっていました。

平成30年改正以降は、複数の株主から株式の贈与や相続を受ける場合についても事業承継税の適用を受けることが可能となります。

中小企業では社長自身とその配偶者などが株式を分け合ってオーナーとなっていることが珍しくありませんから、この点でも事業承継税制を使いやすくなったといえます。

後継者側の人的要件についても緩和されます。

従来は「先代経営者1人から後継経営者1人」への事業承継のみが事業承継税制の対象となっていましたが、平成30年以降は複数の後継者がいる場合も対象となります。

なお、後継者の人数の上限は3名で、「特例承継計画」に記載されている代表権を有している人に限られます。

【原則制度と特例制度】


改正ポイント③:雇用確保要件の実質的な撤廃

従来は、納税猶予を受けるためには事業承継が行われた後、5年間は従業員の雇用(つまり雇用している従業員の人数)を平均で80%維持しなければならないとされていましたが、この要件が撤廃されました。

これにより、事業承継と前後してダイナミックなリストラや人員の整理をしやすくなったといえます。


ただし、事業承継後5年間平均の雇用している従業員数が事業承継前の80%を下回ることとなる場合には、都道府県に対して報告を行わなくてはなりません。

この際、雇用を維持できなくなった理由が事業の経営悪化である場合には、認定支援機関による指導や助言を受けなくてはなりません。

【雇用確保要件を満たさなくなったときの流れ】


改正ポイント④:株式譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の減免

従来、事業承継税制による贈与税、相続税納付税額の計算は、株式移転の原因が株式譲渡、合併、解散による場合でも、株式の贈与や相続時の相続税評価額をもとに行われていました。

今回の改正後は、株式譲渡や合併、解散によって事業承継が確定した場合には、株式の譲渡もしくは合併の対価の額、または解散の時点での相続税評価額をもとにして納付金額を再計算し、この計算による納付金額が当初の納税猶予税額を下回る場合、その差額については免除してもらうことができるようになりました。

改正ポイント⑤:相続時精算課税制度の適用対象者の拡大

従来の事業承継税制においては、相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与者の直系卑属である必要がありました(贈与者は60歳以上、受贈者は20歳以上である必要があります:改正後も同じ)。

平成30年改正では贈与をする人の推定相続人となる人以外であっても相続時精算課税制度の適用を受けることができるようになります。

この改正により、子供や孫といった血縁関係以外の人を後継者とする場合にも事業承継税制の適用の道がひらかれることとなりました。

事業承継税制の適用を受けるために必要な手続き

事業承継税制は、対象となる会社の代表権を有していた経営者が、対象となる後継者に対して当該会社の株式を取得させた場合に適用されます。

上で「対象となる会社」「対象となる後継者」という表現を使っていますが、これらは「特例承継計画」という計画書に記載された会社や人のことを指します。

なお、正式には事業承継税制の対象となる会社のことを「特例承継会社」、対象となる後継者のことを「特例後継者」と呼ぶこととされています。

都道府県へ『特例承継計画』を提出する必要あり

事業承継税制の適用を受けるための「特例承継計画」は、都道府県に対して提出しなくてはなりません。

この特例承継計画には事業承継が行われる会社の、承継までの経営見通しや後継者となる人の情報を記載することになるものと思われます。

特例承継計画に記載するべき内容については、現時点では確たる情報はありませんが、その作成に当たっては中小企業庁が認定する「認定経営革新支援機関」からアドバイスを受けることができます。

(認定経営革新支援機関というのは多くは民間の税理士事務所や経営コンサルティング業者です。)

この特例承継計画の提出は平成3041日から行われます。

もし平成30年の1月~3月のまでに贈与、相続が生じた場合には、4月以降に提出を行えばよいとされています。

相続税額の早見表

事務所概要

名  称アザレア税理士法人
業務内容

・創業・独立の支援
・税務・会計・決算に関する業務
・税務申告書への書面添付
・自計化システムの導入支援
・経営計画の策定支援
・資産譲渡・贈与・相続の事前対策と納税申告書の作成
・事業承継対策
・税務調査の立会い
・保険指導
・経営相談等

<営業時間> 9:00~17:00
<休業日> 土・日・祝日

事務所名昭和町事務所
所  長
山田 悌次
所 在 地
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