相続税の税率は? 税率は取得した相続財産の金額で変わる

2015年に相続税法が大幅に改正されたことにより「うちも相続税がかかるの?」とか「納税額が高額になるのでは?」など、心配される声が多く聞かれます。

確かにこの改正により基礎控除額が引き下げられ、最高税率がアップしたことで、課税される対象が拡大され、富裕層への課税が強化されています。


相続税のしくみや税率を知ることで、自分でもある程度の目安を計算することが可能です。将来の相続に備えるためにも、相続税制や税率について、基本的な知識を身に付けておくことが大切です。

相続税の計算手順と税率

相続税制はとても複雑で、単純に税率を掛ければ算出できるというものではありません。大まかには、次の手順で計算されます。

相続税の計算手順

1.相続人を確定する

相続が発生したら、まず相続人が誰なのかを確定する必要があります。亡くなった方の戸籍を出生まで遡り、実子や養子、兄弟姉妹、親など、法定相続人に該当する人を調べます。もし、法定相続人が一人でも欠けた状態で遺産分割協議を行った場合、その手続きは無効になってしまいますから注意が必要です。

2.課税価格の算定

課税価格は次の算式によって算出されます。

本来の相続財産+みなし相続財産+相続開始前3年以内の贈与財産等-非課税財産-債務、葬式費用=課税価格

本来の相続財産とは、故人がもともと所有していた財産のことです。みなし相続財産は、故人が亡くなったことで遺族の財産となる、生命保険や死亡退職金などです。仏壇や墓などの非課税財産と、借金などの債務および葬式費用は差し引かれて計算されます。この段階で各種特例などを利用し、それぞれの財産評価を行います。

3.課税遺産総額の算定

課税価格から基礎控除額を差し引いて算出します。基礎控除は以下の計算式によって算出されます。

3,000万円+600万円×法定相続人の数=基礎控除額

例えば法定相続人が配偶者と子ども2人であれば、3,000万円+600万円×34,800万円です。

4.相続税額の計算

課税対象となる遺産総額を法定相続分で分けたものとして、各相続人の課税対象遺産額を計算します。


相続人が配偶者と子ども2人の場合の法定相続分

配偶者

遺産総額×1/2

子ども①

遺産総額×1/2×1/2

子ども②

遺産総額×1/2×1/2

 

法定相続分で分けた課税対象遺産額に、該当する税率を掛けて税額を算出し、各個人の相続税額を合算します。先の例で言えば、配偶者と子ども①、②それぞれに税額を計算してから、3人分を合算します。

5.それぞれの納付額の確定

相続税総額を、実際に遺産を取得した割合で按分し、各人の納付額を計算します。例えば遺産分割協議の結果、配偶者が1/2、子ども①が1/2、子ども②の取り分はゼロだった場合、法定相続分にかかわらず、相続税額を配偶者と子ども①で半分ずつ負担することになります。それぞれの納付額が算出されたら、税額加算や税額控除をし、各人の納税額が確定します。

日本の相続税率は累進課税

日本の相続税制は遺産の額が多いほど税率が上がる、累進課税制度を採用しています。資産家ほど相続税がかかるというのは、そういった理由もあるのです。課税対象となる遺産総額を法定相続分で分けた後の金額を下記の表にあてはめ、税率を求めます。例えば、課税される遺産額が4,000万円であれば税率は20%です。

平成2711日以降の相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

最高税率はなんと55%! 相続税額のシミュレーション

では具体的な数字を用いて、相続税額をシミュレーションしてみましょう。相続人は配偶者と子ども2人で、遺産は1/3ずつ分けたものとします。相続財産、債務などの内訳は以下の通りと仮定します。

本来の相続財産(非課税財産含む)

3億円

みなし相続財産

8,000万円

非課税財産

1,000万円

債務・葬式費用

500万円

相続開始前3年以内の贈与財産

300万円

 

まず、課税価格の総額を算定します。

3億円(本来の相続財産)+8,000万円(みなし相続財産)-1,000万円(非課税財産)-500万円(債務・葬式費用)+300万円(相続開始前3年以内の贈与財産)=36800万円(課税価格の総額)

次に課税価格の総額から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を計算します。

36800万円(課税価格の総額)-(3,000万円+600万円×3[基礎控除])=32千万円(課税遺産総額)

課税遺産総額を法定相続分で取得したものとして、それぞれの取得金額を計算します。

 

法定相続分の取得金額

配偶者

32千万円×1/216千万円

子ども①

32千万円×1/48千万円

子ども② 

32千万円×1/48千万円

 

それぞれの取得金額に応じた税率を掛け、税額を算出します。

配偶者

16千万円×40%-1,700万円=4700万円

子ども①

8千万円×30%-700万円=1700万円

子ども②

8千万円×30%-700万円=1700万円

 

合算すると、相続税の総額は8100万円です。

最後に、実際の取得分に応じて各自の納税額を確定します。

この場合では1/3ずつで遺産分割をしているので、それぞれの納税額は以下の通りです。

8100万円×1/32700万円

 

遺産を配偶者が相続する場合には、“配偶者の税額の軽減”を適用できます。これは配偶者が取得した遺産総額が、法定相続分か16千万円のどちらか多い金額までは、相続税がかからないという制度です。このケースでは、法定相続分の取得額が16千万円ということで、配偶者の相続税は0円です。

その結果、それぞれの納税額は次の通りになります。

配偶者

0

子ども①

2700万円

子ども②

2700万円

 

例えば遺産を法定相続分で分けたとしたら、それぞれの納税額はどうなるでしょうか。

配偶者

8100万円×1/2450万円  配偶者の税額軽減により0

子ども①

8100万円×1/4225万円

子ども②

8100万円×1/4225万円

 

なんと1/3ずつ分けた場合と比べて、子どもの相続税額がそれぞれ675万円少なくなりました。日本の相続税制では、取得した相続財産の金額によって税率が変わり、さらに遺産をどのように分けるかによって納税額が大きく変わるのです。

相続税の税率を下げるには、総合的な対策が必要!

税額シミュレーションでご紹介しましたように、相続人に配偶者がいる場合には、配偶者の税額軽減を利用することにより、相続税の総額を少なくすることができます。しかし、これを目いっぱい活用すると、次に配偶者が亡くなり、子どもたちだけで相続する段階(二次相続)では税負担が重くなるのが一般的です。

そこで相続税の負担を軽くするためには、先の相続(一次相続)だけでなく二次相続までを見据え、長期的かつ総合的な対策が必要です。相続財産が基礎控除額を超えそうであれば、早めに税理士に相談することをおすすめします。

ただ、取得した財産の評価額や遺産の分け方によって納税額が大きく変わるのが相続税です。相続手続きをした税理士によって、評価額や遺産分割のアドバイスに違いがあることから「相続税の額は税理士によって変わる」とも言われます。そこで相続対策の相談をする際には、相続税に詳しく、申告実績が豊富な税理士を選ぶことが重要なポイントです。

相続税額の早見表

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