相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に申告書を提出し、金銭で一括納付しなければなりません。納付税額がなく、特例の適用を受けないなど一定の要件を満たせば、相続税の申告は不要です。しかしながら、被相続人が亡くなった際には相続税だけでなく、所得税のことも忘れてはいけません。
個人の所得税は1月1日から12月31日までの収入に対して課税されますが、1月1日から被相続人が亡くなるまでの間に得た収入は所得税の課税対象となります。この場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に所得税の確定申告をしなければなりません。これを「準確定申告」といいます。特に、被相続人に賃貸家賃収入がある場合は少しややこしくなりますので、注意が必要です。
被相続人がアパート等を貸していて家賃収入がある場合は、相続税と所得税のどちらになるのでしょうか。相続税であれば相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内、所得税なら4ヵ月以内に申告しなければなりませんので、違いについて確認しておく必要があります。では賃貸借契約と家賃収入の取り扱いについて見てみましょう。
被相続人は賃貸人(貸主)として賃借人(借主)と賃貸借契約を結んでいますが、被相続人の賃貸人(貸主)という立場とこの契約は、相続人にそのまま引き継がれます。法的には契約書はそのままで問題ありませんが、亡くなった人の氏名を契約書に記載したままでは賃借人(借主)に違和感を与えてしまいます。この点を含め、相続人が複数人いる場合などの実務的な方法につきましては「相続人が複数いるとき、遺産分割協議が完了するまでの家賃の取り扱い」で解説します。
家賃収入がある場合、どこまでが被相続人の所得で準確定申告の対象なのか、どこからが相続人の所得で確定申告の対象となるのかが問題となります。
原則は、亡くなった日までに支払期日が到達している家賃収入が被相続人の収入となり、つまり準確定申告が必要な所得となります。具体的に9月10日に亡くなった場合を想定してみます。9月分の家賃は8月末日に支払うケースが多いと思いますので、この場合は支払期日が到達しており、8月末日に受領した9月分の家賃までが準確定申告の対象です。
ところで、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなど一定の要件に該当すれば、9月1日から10日までの日割り計算をした家賃分までを被相続人の所得金額に含めることができます。その場合、9月11日以降の家賃収入は相続人の所得となり、所得税の確定申告が必要となります。
家賃収入のどこまでが相続財産に含まれるか?
被相続人が亡くなった日までに支払期日が到来している家賃収入が相続財産となります。
上記の例で9月10日に亡くなった場合、8月末に受け取った9月分の家賃は相続財産に含まれます。
申告期限までに正式な分割割合が決まらないことがあります。この場合、次のような問題が生じてきます。
ここでは遺産分割協議が終わっていない場合の相続税や所得税の申告について解説していきます。
遺言で財産を分割する方法を指定分割といい、共同相続人全員の協議で分割する方法を協議分割といいます。遺言がない場合はもちろん、遺言があっても協議分割が成立した場合は協議分割が優先されます。共同相続人の1人から分割要求があると協議に応じなければならないため、相続税の申告期限までに協議が終わらないことがあります。
まずは、相続税申告に関する話です。相続税の申告期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヶ月以内であり、たとえ、遺産分割協議が終わっていなくても申告・納税しなければなりません。
この場合、いったん各相続人が法定相続分を相続したとして申告し、各自が相続税を納付します。後日、遺産分割協議が調い次第、改めて正確な相続税の申告をして、追加納付するか、または還付を受けることになります。
相続が発生してから、遺産分割協議が終わるまでの間に受け取った家賃収入は誰の所得になるのでしょうか?
相続財産に関しては、通常、分割協議が確定すると相続開始時までさかのぼって効力が発生します。つまり、賃貸不動産であれば、相続開始時から相続した人が所有していたことになります。
しかし、家賃収入は扱いが異なります。東京高裁判決では「相続開始後遺産分割までの間に相続財産から生じる家賃は、相続財産そのものではなく・・・」とあり、別の最高裁の判例では「賃貸不動産とその賃貸不動産から得られる賃料は別の財産であり、賃貸不動産の帰属先を決めていても賃料の帰属先にはならず、相続開始時までさかのぼる遺産分割協議の効力は賃料には及ばない」とされています。
つまり、家賃収入は遺産とは別の財産ですので、賃貸不動産を相続した人のものにはならないとされています。各相続人が相続分に応じて家賃収入を取得し、また管理費を負担したとして、所得税の確定申告をする必要があります。
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