子供の平均人数が減り、法定相続人の人数も減少している現代では、孫への生前贈与や、相続で節税するケースが増えています。 孫への生前贈与で節税する方法と注意点、孫に相続させる方法、特例を活用して節税する方法について解説します。
被相続人の子が既に他界している場合、代襲相続により孫が法定相続人になります。ですから、子が亡くなっている場合には何もしなくとも孫は法定相続分を相続する権利があります。
ただし子が複数いた場合、孫にとっては叔父や叔母という関係の法定相続人と遺産分割協議をしますから、自分の持分をきちんと主張できるかという不安があります。
子が既に亡くなっており、孫に確実に相続させたい場合には、あらかじめ弁護士や税理士などの専門家へ相談しておくことをおすすめします。
孫への相続が注目されているのには、子の数が減っていること以外にも理由があります。子の財産はいずれ孫が相続すると考えられます。そして子から孫への相続時には再度相続税がかかる可能性があります。しかし、子を通さず孫へ直接相続させることで、相続税を徴収される機会を減らせます。
相続財産が非課税枠内なら意味がない
子を飛ばして孫へ相続させると相続税が徴収される機会が減るわけですから、トータルでみれば節税になる可能性が高いでしょう。ただし、相続税には非課税枠がありますから、非課税枠内での相続になる見込みなら、こうした対策は必要ありません。
子が健在でも、孫を養子とすることで法定相続人を増やすことができます。相続財産に対して、法定相続人の人数が少ない場合などに有効な手段です。相続税の非課税枠は相続人の人数によって決まりますから、法定相続人を増やせば、非課税枠も増え、相続税負担が減ります。
孫を養子にして増やせる非課税枠は1人まで
非課税枠の増加を無制限に認めると、複数の養子縁組を行うことで相続税の大幅な軽減ができてしまいます。このため、養子によって増やせる非課税枠は1人までとされています。(実子がいない場合には2人まで認められます。)
養子になった孫に課される相続税は2割加算
孫を養子にして相続税対策を行う際に注意したいのが、2割加算の対象となることです。相続税の2割加算とは、被相続人の一親等の血族(父母・子)と配偶者以外の人が相続などにより財産を取得した際に、相続税相当額の2割を加算されるという制度です。
被相続人の兄弟・姉妹や甥・姪、内縁の妻や友人・知人などがこれにあたりますが、養子となった孫も含まれます
ポイント
相続税非課税枠の計算式
相続税の基礎控除額(非課税枠)=3,000万円+相続人の人数×600万円
相続税2割加算の計算式
個々の相続人の税額控除前の相続税額×0.2
孫を養子にして相続税対策を行う場合は、2割加算についても十分に考慮しなくてはなりません。また、子が既に死亡している場合には、代襲相続になりますので、2割加算の対象にはなりません。
遺言の内容は基本的に優先されますから、代襲相続や養子縁組をしなくとも孫に財産を遺すことは可能です。ただし、法定相続人の遺留分を侵してしまうと、相続時にトラブルとなる可能性がありますから、注意しましょう。
また、法定相続人ではない孫に相続財産を遺す場合は、相続ではなく遺贈となり、2割加算の対象です。
孫へ生前贈与を行うことで相続財産を減らし、相続税を節税する方法もあります。生前贈与は年間110万円までは非課税です。
相続人への生前贈与は相続開始(被相続の死亡時)から3年以内に行うと、相続財産に含まれてしまい、相続税の対象となります。これを3年内加算ルールといいます。ですが相続人でない孫への生前贈与は3年内加算ルールが適用されず、相続税がかかりません。3年内加算ルールは原則的には相続人を対象としたものだからです。
孫が相続人の場合は3年以内の生前贈与の意味なし
ただし、遺言で孫に相続させると指定されている場合や、孫が生命保険金(死亡保険金)の受取人となっているケースでは、孫は実質的には相続人と考えられますから、3年以内加算ルールが適用されてしまいます。そのため子や配偶者への生前贈与と同じく、早い段階で計画的に贈与をしておく必要があります。
孫へ生前贈与する場合には、他にも注意点があります。
贈与した資産の管理は孫が行うこと
孫がまだ幼く管理能力に不安があるからといって、贈与した財産を被相続人が管理していると、生前贈与したとみなされないことがあります。孫に内緒で口座を作って生前贈与しておくこともできません。孫への生前贈与は、孫と被相続人との間できちんと合意して契約を行う必要があります。
複数人からの贈与に注意
贈与税が110万円まで非課税となるのは、贈与を受けた人ごとの計算です。つまり、生前贈与を行う被相続人が110万円しか贈与をしていなくても、贈与を受けた孫が他の親族などから他にも贈与を受けていて合計で110万円を超えた場合、超えた分には贈与税がかかるということです。
例えば、母方の祖父母から100万円、父方の祖父母から100万円、合計で年間200万円の贈与をうけた孫は、200万円から110万円を引いた90万円に対して贈与税が課されてしまいます。
教育資金一括贈与の特例を使えば、子や孫への贈与が1,500万円まで非課税になります。
教育資金の贈与はそもそも贈与税の対象ではありませんから、活用しにくいという面もある制度です。しかし、教育資金の贈与が贈与税の対象とならないためには、教育資金が必要となった都度に贈与する必要があります。
教育資金一括贈与の特例は、まとまった額の教育資金を一括で贈与したい場合には有効な制度といえるでしょう。
教育資金一括贈与は、将来かかる教育費も見越して一括でまとまった額を贈与できるのが利点です。しかし、もしも30歳までに使いきらなかった場合は、残った部分に贈与税がかかります。教育資金として使用したという証明が必要ですから、領収書などを保管しておく必要があります。
教育資金一括贈与の対象は、学校への支払いや習い事にかかる費用です。ただし学校への支払い以外は500万円までとされていますから注意が必要です。
教育資金一括贈与で非課税となる1,500万円も、生前贈与の110万円と同じく、受け取った人の贈与税課税の控除額です。つまり、母方と父方の祖父母両方から教育資金一括贈与を受けた場合、その合計額が1,500万円を超えると、超えた部分には贈与税が課されます。
子の結婚や子育ての資金贈与が1,000万円(結婚のみの場合300万円)まで非課税となる結婚子育て資金贈与の特例は、孫にも適用されます。20歳から49歳の孫になら、結婚や出産、子育ての費用を一括で贈与することが可能です。
結婚や子育ての費用も、教育資金と同じくその都度贈与する場合に贈与税がかかりませんから、一括で贈与したい場合に有効な制度です。
結婚子育て資金贈与は、被相続人が死亡するまでに使い切らないと、使い切らなかった部分が相続税の課税価格に加算され、節税の効果が薄れてしまいます。
しかし、孫への結婚子育て資金贈与は、もしも相続税の対象となった場合も2割加算がされないというメリットがあります。
孫への相続は、大きな節税になる可能性があります。しかし、2割加算や次の相続時の相続税が非課税となる可能性なども踏まえて、適切な方法を選択する必要があります。
お孫さんへの相続を検討する際には、一度税理士に相談することをおすすめします。
名 称 | アザレア税理士法人 |
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業務内容 | ・創業・独立の支援 <営業時間> 9:00~17:00 |
事務所名 | 昭和町事務所 |
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所 長 | 山田 悌次 |
所 在 地 | 鳥取県倉吉市昭和町2-114 |
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中国税理士会所属 |